教会内外のすべての性差別にNoを!
~衆院選、女性議員450席中74人席当選(15.7%)で過去最多とは!~
2024年11月1日
石破内閣が誕生して僅か8日後に衆院が解散され、「政治と金問題」争点の衆院選挙があっという間に始まり、あっという間に終わった。女性議員は何人はいったかな、と家で取っている2紙に目を凝らしたが、朝日が翌日の28日の一面選挙詳報の最下欄に、ごく小さく「73人で過去最多」と載せていた。前回選が45人、過去最高は09年の54人だったそうだ。図書館に行って他紙を調べたら、東京、読売新聞が、29日に朝日よりは大きな欄をとって、政党別などの情報も伝えていた。地元紙神奈川新聞は、29日一面のコラム「照明灯」に、女性参政権が採用された初めての1946年の選挙時には、全国で39人が当選し、議席数に占める割合は8.4%だったと記載されていた。78年間で約倍になったということだ。神奈川県からは松尾トシ子という人と、吉田セイという二人が当選し、神奈川新聞は両者の主張を一面で取り上げた、と少し誇らしげに書いていた(今回はなかった)。それにしても、15.7%では、低下し続ける日本のジェンダー・ギャップ指数があがりそうもない。数や率が小さくとも、超党派で選択的夫婦別姓制度など、女性が痛みを抱えている問題に取り組み、実現させるなど身のある政策に取り組んでもらいたい。(水田秀子)
以下は、先ごろ発行した『教会と女性』第36集の巻頭言です。外国人労働者の人権状況から見える、日本社会の性や人権意識の未成熟さ、ジェンダー不平等、アジア諸国に対する「蔑視」を問うています。
『誰の傍らに立ち、共に何を目指すのか』
紅葉坂教会 比企 敦子
「本当に良かった。心からうれしい!」最高裁で逆転無罪を勝ち取ったベトナム人元技能実習生レー・ティ・トゥイ・リンさんが記者会見で喜びの声をあげた。死産した双子を遺棄したとして死体遺棄罪に問われていた。事件が報道された当時、言いようのない無力感と怒りを覚えた。まさに二十一世紀の「奴隷制」ではないかと…。
裁判の上告書として、一般の女性たちの意見書や署名が提出され、市民による「支援の輪」が裁判を後押しした。そのような支援による無罪判決だった。それにしても、双子の父親はなぜ全く責任が問われないのだろうか?
リンさんの弁護士は、「孤立出産した母親の状況がいかに過酷か、男性が多い裁判所に見てもらいたかった」と語った。遺体をタオルで包み、名前を付けて段ボールに入れ、自宅の棚の上に置いたという一連の行為は、リンさんなりに遺体を敬う埋葬行為と判断された。だが、遺棄には当たらないとしても、若いベトナム人女性が異国でそうせざるを得なかった実習制度や、日本社会は根底から問われていると思う。
外国人技能実習制度下では、恋愛や出産が禁止されているため、「ペナルティー」が課せられるのだ。母国で交わした労働契約の職種や賃金が実際とかけ離れていても転職できず、逃亡が相次いだ。日本政府は、この制度への批判の高まりに対応できず、廃止と改革を強調しているが、五月の入管法「改悪」を見ればその内実は疑わしい。低賃金で使える労働力として片棒を担いでいるに過ぎない。
一方、年間約14万(2020年度)という日本の妊娠中絶件数の多さは、「包括的性教育」に取り組もうとしないこの国の性教育の実態を表している。
数か月前、沖縄米海兵隊員との間に生まれた子どもを育てる日本人シングルマザーの養育費取得に奮闘する、米女性弁護士を追うドキュメンタリーが放映された。男性側にいかなる事情があろうとも子どもの父親である事実と責任を免れることは許されない。米国に妻子がいようとも、DNA鑑定書を手に正当な養育費を請求する辣腕弁護士だった。彼女自身がシングルマザーゆえであるとしても、痛快だった。
翻って日本社会や教会に目を向けると、性や人権意識の未成熟さ、ジェンダー不平等、アジア諸国に対する「蔑視」を実感する。「難民鎖国」と呼ばれる日本に、G7広島サミット議長国の資格など果たしてあったのだろうか。
『戦争は女の顔をしていない』筈なのに
以下は、『教会と女性』35集を準備していた5月末、1日も早い停戦を願って巻頭言に掲げたものです。ウクライナ軍の反転攻勢が強まり、追い詰められたプーチン政権が予備役30万人の動員と住民投票の結果と称する4州併合を一方的に宣言した9月末、状況は益々先行きの見えない泥沼と化しています。教区性差別問題特別委員会一同の、停戦への願いを込めて改めて掲載します。
2022/10/11 横浜大岡教会 水田 秀子
ロシアのウクライナ侵攻を機に、軍事的中立を保ってきた北欧二か国がNATOへの加盟を申請した。プーチンの思惑とは真逆の結果となったこの話題が新聞の一面を賑わした5月中旬、フィンランドの首相が日本を訪れた。サンナ・マリン氏、36才。2019年欧州で最年少の首相となった女性だ。恵まれた家庭で育った訳ではなく、27才で地方議会の議員に選ばれたのが政治家への第一歩だそうだ。スウエーデンの首相マグダレナ・アンデション氏、こちらは54才。二人とも前政権で重要閣僚を務めた後、トップに選出されている。奇しくも二人の女性首相が、同盟加入への舵を切ったことになる。
2021年12月、独首相を退任したアンゲラ・メルケル氏はロシア支配下の東独で牧師の子として育ち、30代半ばまで物理学の研究者だった。ベルリンの壁崩壊に衝撃を受け政治の道に入り、堪能なロシア語でゴルバチョフとの交渉の通訳を務め、頭角を現したという。歴史に「もし」はないと言われるが、もし、メルケルが更に四年在任したら、この危機にどんな働きをしただろうか。EUの盟主と言われた彼女が欧州の結束を守っていたら、プーチンは侵攻に踏み切らなかったただろうか。砲撃止まない首都キーウを訪れたEU首相フォン・デア・ライエン氏は、メルケル政権で、国防相などを歴任した女性だ。この危機に、水面下で彼女と接触を取っているかもしれない、これも夢想だ。
キーウの北方の街ブチャでのロシア軍の蛮行は世界を震撼させた。その凄惨な現場を検証したウクライナの検事総長が女性だったことにも衝撃を受けた。厳しい眼差しと、真っ赤に塗った口紅が印象的だった。今は、戦時下で始まった、戦争犯罪者の裁判の指揮をとっていることだろう。
このように、社会の上層部活躍する女性がいる一方、戦火の最前線で戦っている女性兵士もいる。陥落したマリウポリのアゾフスターリ製鉄所の地下で、夫と共に戦っている女性兵士(夫は戦死)や、捕虜となってウクライナ軍に連行されたロシア軍の女性兵士の姿が報道されなんともやるせない気持ちになった。『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著)筈だったのではなかろうか。士気に燃えていると言われる屈強な男性たちだって、本当は苦しくて辛くて堪らない筈なのだ。この『教会と女性』35号が刷り上がる頃には、停戦が成立していることを願うばかりだ。
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